安全な住いとは

 ここ数年マスコミをにぎわせているダイオキシン等の公害問題に絡んで、住まいの内部にも「公害」を抱え込んでいる実体が明らかになりつつあります。
一般に「シックハウス」と言われている問題です。
新建材などに使われている合成化学物質から発生している、「環境ホルモン」とも言われている内分泌攪乱物質の問題です。
いまだ合成化学物質と健康被害の因果関係が立証された訳では有りませんが、私は、樹脂を使って作品作りを行った経験に基づいて、製作途上での発汗現象、喉、目、鼻の痛み、かゆみ等の症状を感じ、その毒性を疑わざるを得ません。

どんな建築の教科書を見ても、「住まいは外敵に対する防御の形で生まれてきた」と書いてあります。今問題になっていることは、「住まいの内部にもっと怖い敵がいる」ことが分かり始めてきました。これを良い機会にみんなで、住まいのあり方を根本から考え直してみる最高のチャンスではないでしょうか。

私たちの身の回りから、樹脂製品を全てなくすことはとうてい考えられません。
しかし出来るだけ、安全を疑われている物を私たちの身の回りから遠ざける努力はするべきだと思います。
接着剤、防腐剤、防虫剤、ペンキ類、ベニヤ板、ビニルクロス、カ−ペット等ほとんどの建材に合成樹脂が使われています。
これらの建材を見直して、自然素材による住まい造りが出来ないものかと考えています。

自然素材による住まい造りにはそれなりのリスクが有ります。工期が長くなる、値段が高い、メンテナンスが大変である、森林破壊による自然破壊が進む等です。
これらのリスクを回避するために合成化学物質が有効な手段として選ばれてきたのも事実です。
しかし今、それと引き替えに「自身の健康を脅かしているかもしれない」という問題が指摘されているのです。

私たちは、身近な出来ることからこの問題に挑戦していきたいと考えています。その第一歩が日本の風土に根ざし作り上げられてきた、過去の建築物から教えを受けることです。
過去の建築物に使われた材料は、その使命を果たしたとき「土」に還るという性質を持っていました。この教えは、私たちが受け継ぐ最も貴重な伝統文化なのではないでしょうか。

リスクには次のような問題があります。
 1. 工期が長くなると言う問題。
 2. 値段が高いという問題。
 3. メンテナンス(保守管理)が大変という問題。
 4. 皆が自然素材を使うと自然破壊を引き起こすと言う問題

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