粘土とはどのような物でしょうか
粘土とは、「適量の水を含んでいるときに粘性と可塑性を示す微粒の天燃物」と定義されています。
粘土は、その大部分が結晶です。岩石の中の雲母などと基本的には同じ様な整然とした層状構造をもった含水ケイ酸塩鉱物が主体となっています。その化学成分は、主にケイ酸・アルミナ・水でこのほかにFe.Mg.Ca.Na.Kなどが含まれています。
粘土中に微粒の鉱物として広く含まれる層状粘土鉱物は、
カオリン鉱物、
雲母粘土鉱物、
スメクタイト(モンモリロナイト)
の三種類及び混合層鉱物と呼ばれる種類です。
粘土の中には生きているという表現にふさわしい活発な性質を示す物があります。それは科学的活性あるいは親和性と呼ばれ、イオン交換性、吸着性、触媒能、複合体形成能(コンステンシ−)、膨潤性など、鉱物としては珍しい性質です。
これらの科学的活性を表面活性と言いますが、この性質をもつ粘土の代表は、ベントナイト、酸性白土などと呼ばれる粘土で、スメクタイトを主成分鉱物としています。
粘土鉱物の表面はほとんどのものが負電荷です、そして表面電荷と反対符号の電荷をもつイオンが常に吸着されています。また、粘土は微細粒子からなり、粒子の大きさは一般に2ミクロン以下です。
コロイドとしての挙動を示し、大きな比表面積(単位質量当たりの表面積)は、粘土に表面活性を与えます。
一般に、粘土の物理的状態は含水量に応じて変化します。
粘土は、高い含水量では薄いゾルとしてニュートン流動を示しますが、含水量が低下するにつれて非ニュートン流動に変化してペースト状となります。さらに乾燥すると、塑性を示すようになります。
塑性状態では、粘土は成形可能であり、外力に応じて任意の形状をとり、外力を除いてもその形を保ちます。さらに含水量が低下すると半固体状態を経て、最後には固体状態になります。
このように、粘土は含水量によって異なった物理的状態をとり、それに対応して変形に対する抵抗の大きさも変化します。このことをコンシステンシーという言葉で総括して表しています。
すなわち、コンシステンシーとは、粘土が外力を受けた場合に、流動や変形に対して抵抗する度合いです。
水分の違いを基に評価した土の状態を土壌学の言葉では、コンシステンシーといい、粘着性、可塑性(凝集力)の程度と種類、変形や破壊に対する抵抗値であらわします。野山で判断する場合、押さえても水がしみ出さない程度に水を含ませて、親指と人差し指のあいだでおしつけ、どのくらいくっつきやすいかで粘着性をみます。
酸処理により、吸着能・脱色能・触媒能などの性能を向上させた粘土を活性白土といいます。この原料粘土としては、酸性白土・Caベントナイトおよびハロイサイトが使用されます。
粘土鉱物の生成
母材を構成する岩片や鉱物粒子は、土壌中の水と接触すると溶解しやすい成分から溶けだしてゆきます。構成分子の溶けだした粒子は、その溶けた程度に応じて他の鉱物に変わります。成分の一部が溶けだした粒子は、さらに物理的な変化を受けやすくなり、同時に粒径も変化するのが普通です。水の移動にともない、その濃度、PH、あるいは酸化と還元の状態などが変化して、溶けている成分は沈殿・再結晶化してその場の環境に応じた新しい粘土鉱物が出来ます。このように生成した粘土鉱物は、大きく
結晶質ケイ酸塩、
非結晶質ケイ酸塩、
酸化・水酸化鉱物
の三つのグループに分けられます。
粘土を分析すると
土壌の粘土や古くから粘土として利用されていたものを分析すると、普通その大部分を結晶性ケイ酸塩が占めています。
これは四個の酸素原子の作る三角錐の真ん中の隙間に1個のケイ素原子が入り込んで出来るケイ酸四面体が、平たく並んで層を作り、さらにその層とアルミニウムとかマグネシウムなどを中心とした別の層とがサンドイッチ状に積み重なった鉱物です。
ケイ酸四面体の層の積み重なり方は三つのタイプがあり、その層内の原子の種類とか配置などによって
ハロイサイト
カオリナイト
スメクタイト
バーミキュライト
クロライト
などの名前が付いています。
粘土が分布しているのは、風化殻とも呼ばれる地殻の最上部です。そこでは地殻が気圏、水圏、生物圏と接し、交わっていて、土壌圏ともよばれる空気と水と生物を中に持った土があります。土の中の粘土は、地殻の主成分元素の他に、水素(H)を水分子または水酸基の形で含んでいて、含水珪酸塩と呼ばれる化学組成を持っています。
粘土の測定法 沈降法、水ひ法
シルトや粘土のような小さな粒子は、普通、水中を沈んでいく速さが粒径によって異なる性質を利用して測定します。
微粒子の形を球状と仮定すると、水中の沈降速度は、温度や粒子の比重によっても少し変わりますが、ほぼ粒径の二乗に比例して速くなります。
2ミクロンという粒径では、粘土粒子が球状をしているときに水中を沈んでいく速さは、20℃では1時間に12.8mmという非常にゆっくりしたものです。5cm沈むのに約4時間かかるわけです。5ミクロンの大きさになると、沈降速度は6.25倍になり、5cm沈降の所要時間は約37分です。
簡単に出来る粘土分の検出 水ひ法
ペットポトルに土を入れ、水を加えて良く振り置いておくと、粒子の細かい粘土分は一番上の層に溜まります。
粘土分の層の上でペットボトルをナイフでカットして、すくいだせば均質な粘土分を手に入れることが出来ます。
カオリンとは
中国江西省の景徳鎮の近くの高嶺(高綾)から採掘される白色粘土が優れた陶磁器原料であることが広く知られたので、世界各地の同じような粘土は産地名の高嶺がなまってカオリンと呼ばれるようになりました。
その後、カオリンの主成分がシリカ(二酸化珪素SiO2)、アルミナ(Al203)、水(H2O)であることが明らかになり、この三成分からできているカオリンは粘土のもっとも純粋な物と考えられ、鉱物名としても用いられるようになりました。
カオリン
1次カオリン: 花崗岩のような長石に富む岩石が風化あるいは熱水変質を受けて出来たカオリン鉱物が、その場所にとどまって集積(残留)したもの。
山形・板谷カオリン、栃木・関白カオリン、チャイナクレー
2次カオリン: 流水などによって移動して堆積した物。
愛知・木節粘土、蛙目(がえろめ、がいろめ)、ボールクレー、ファイアクレー
カオリンの鉱物には、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイトという4種類の鉱物が含まれています。
スメクタイトとは
スメクタイトと呼ばれる鉱物にはいくつかの種類がありますが、その中のモンモリロナイトを主成分鉱物とするベントナイトは世界各地に産出する粘土です。膨潤性が著しいので、日本名で膨潤土と呼ばれたこともあります。膨潤というのは、微粒の固体物質が液体を取り込んで体積を増大する現象です。
比表面積というのは、粉末物質の単位質量当たりの表面積のことで、粘土は大きな値を示すことが多いのですが、モンモリロナイトの測定値は1グラムあたり約800?に達します。小さな小さじ半杯程度のわずかな量で、テニスコート三面の広さという表面積を持っています。
日本では、ベントナイトは山形県、群馬県、新潟県等に分布し、新第三紀の火山灰や流紋岩が変質したものです。
タルクは、粘土鉱物としては比較的地下深いところで生成し、かんらん岩やマグネサイト、ドロマイトなどが変成作用を受けて出来たものです。
ナトリウムモンモリロナイトの塑性指数が大きいとは、利用面で一般に有利な性質ですが、工学的な土の性質としては、膨潤性も大きく不安定で、好ましくありません。このような不安定な土には、少量の石灰を加えることによって、土質を安定させ、改善することが出来ます。ソイルライム処理(石灰安定処理)と呼ばれています。モンモリロナイトの交換性陽イオンがカルシウムに変わることによって液性限界が低下するのですが、それだけではなく、粘土粒子の表面にカルシウムイオンが吸着され、また、石灰、シリカ、アルミナ、水の化合物や、炭酸カルシウムなども出来て土が固まるとされています。しかし、詳しいことはまだ明らかになっていません。
スメクタイトという族名は、以前モンモリロナイトと呼ばれていました。
スメクタイトは、「汚れを取る」という語のラテン語smecticusからゆらいしてつくられた名前です。スメクタイト系粘土は、強い吸着性をもち、昔から石鹸の代わりに使われており、その性質をよく表現した名前です。
膨張性粘土鉱物として、スメクタイト族の各鉱物とバーミキュライトが代表的な物です。
バーミキュライトの名称は、ラテン語の「ひる」Vermiculariに由来し、ひる石を焼くと、ちょうどひるが血を吸ったように膨張するのでこの名称があります。
粘土のイオン交換
アロフェンとイモゴライトは、陽イオン交換能と陰イオン交換能の両方を持つという興味深い特性を持っています。アロフェンとイモゴライトを含む土壌は、鉛、銅、亜鉛などの重金属イオンをその陽イオン交換基に強く吸着し、また、リン酸イオンやフッ素イオンなどの陰イオンも強く多量に吸着します。
スメクタイトとバーミキュライトの陽イオン交換容量がとくに大きいことが注目されています。これらの粘土は、その機能を利用して有害重金属や核廃棄物中の放射性核種を粘土に吸着させ、それらが環境中に拡散するのを防止する目的に使われています。
陰イオン交換を実質的に行う鉱物は、アロフェン、イモゴライト、微粒子のカオリン鉱物などに限られます。