土の塗料

顔料、バインダ−に合成化学物質を用いないで塗装を行う方法としては、顔料の種類を何にするか? バインダ−に何を使うか? という二つの問題があります。

化学物質自体は、当然自然界にも存在し、ときに人の命まで奪うような猛毒なものもあります。このことは、自然界の適者生存の原理でありそれぞれの種族保存本能から作られている化学物質だと思います。
私たちは、この自然界の化学物質まで避けて通るわけにはいきません。幸い人類誕生以来それら自然界の化学物質とのつきあいの中である程度の免疫を獲得し、死に至らしめるような物質については学習し遠ざける術を身につけてきたといえます。

しかし、毎日何百何千種類と作られていく合成化学物質との人類のつきあいは、高々100年ほどの時間しか持ち合わせていません。
環境ホルモンといわれるような細胞単位で遺伝子情報にまで組み込まれてしまう化学物質が新たにどんどん作られ続けていると考えることもできます。

2002.1.5の朝日新聞にもプラスチックや缶詰の塗料などに含まれる、ビスフェノ−ルAが許容量以下でもネズミの実験で精子量の減少がみられたことを発表しています。この問題などは、3年ほど前から学者と化学業界が対立して論争を繰り広げていることです。

このことの白黒の決着が付くまで待つことなく、私たちは生活環境を守ることを自らの手で作り出さなければならない時代になったともいえるのではないでしょうか。
私は、ルネサンスの画家たちがどのようにして絵の具を作り、500年もの長い間それらが保たれてきたのかを文献で調べそこからヒントを得、土の顔料を使い、バインダ−としてミルクカゼイン、アラビアゴム、膠、漆等を用いて塗料実験を繰り返しています。
このペ−ジでは、それらの結果を順次アップしていきたいと思っています。

ミルクカゼインをバインダ−とした、土の塗料

これらのサンプルは、様々な地方の土を塗料にしてラワンベニヤに布で刷り込むようにして塗り上げたものです。
土の細かい粒子が木目の間に入り込み、砥の粉処理をしたような柔らかな肌触りになります。大きな面積を塗るのは大変ですが、家具や建具などの塗装には使えそうです。

拭き土塗装
バインダ−にミルクカゼインを用いて拭き取り塗装をしたものです。


 中国紅土(ラワンベニヤ)           中国紅土(シナベニヤ)             黄土(シナベニヤ)

木目起拭き土仕上げ

杉板を焼き、薄く木工ボンドを溶いたものを塗った上から石灰と土を混ぜたものを塗り、磨き出す仕上げ。大変な手間がかかる仕上げですが、
木の持つたくましさが引き出される仕上げです。

土磨き仕上げ

土と生石灰を混ぜ下地に薄く塗り付け磨き出す仕上げです。このサンプルは下地がベニヤですが、プラスタ−ボ−ド、ケイカル板などでも可能です。


 沖縄赤土鏝磨き                小牧大山土ロ−ラ−塗り布磨き 

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