泥団子の表情 いろいろ

光る泥団子の仕上げ方には、千石磨き(大津磨き)を応用していますから、無限の表情の違いを生み出すことが出来ます。
この表情を生み出す方法として、ドイツのバウハウスで試みられた、ファクツ−ラという技術を使ってみます。

1. 下地の状態

2. 仕上げノロの付け方

3. 色土の選定

4. タイミング

まずこの4つのファクタ−を考えます。

1. 下地の状態

 a.芯になる団子に直接仕上げをかける。

 b.芯になる団子に同じ土でノロを作り中塗りをする。

 c.芯になる団子に砂漆喰で中塗りする。

(b.cについては、中塗り状態をプレ−ンなものにするか、ラフな面にするかの違いがあります。)

中塗りの仕方は、上に塗る仕上げ土の色味に影響を与えたり、磨き仕上げの状態を左右したりと重要な要素ですが、ここでは煩雑を避けるために上記の範囲にとどめます。

2.  仕上げノロの付け方

 a.均一に薄くのばして同色の土を付ける。

 b.均一に薄くのばして異なる色の土を重ねていく。

 c.ランダムあるいはアトランダムに様々な色土を塗る。

3. 色土の選定

 a.各地で入手した色土

 b.弁柄、松煙、藍等の自然顔料を用いる。

 c.左官用色粉、耐アルカリ性の染料・絵の具。

4. タイミング

 a.一回目が乾いてから二回目をかける。

 b.一回目が半乾きの状態に二回目をかける

 c.一回目を一日以上置いて、完全硬化後二回目をかける。

このようにファクタ−を整理しそれぞれの組合せをすれば、順列組合せで途方もない違いを生み出すことが出来ることになります。ファクタ−としては、色土を二色以上混ぜ合わせる、砂の粒子を変える、加飾する等色々考えられますが、ここでは、あまりに煩雑になるので上記だけにしておきました。

たとえば、

1a+2a+3a+4aの場合では、芯になる団子を天日干しにして真球を瓶の上で削り出すと、砂が表面に現れ凸凹した物になります。その上に直接仕上げノロを薄く塗ります。色土は手持ちの好きな物を選びます。一回目を塗って乾いたら二回目を塗り、磨きにかかります。

このようにすると、完成した団子は、表面の凹凸に付いた仕上げノロが凸部では磨け、凹部では磨けなくなりますから、半光沢の団子が出来ることになります。

参考作品

これは最も基本的なもので、固まりの土の一部を半球に磨きだした物です。この方法は芯になる土をまん丸にして磨けば光る泥団子は出来ますが、土は呼吸していますから空気中の水分の出し入れによって、光は長続きしません。また、芯になる土を磨いているだけですから、表面の仕上げ方はかなり制約されたものになります。








1b+2a+3a+4aタイプ

土は水俣赤土。赤が斑になっているのは、自然の土を使った場合良くあることですが、理由はよく分かりません。ただ期せずして現れるこれらの模様は美しいと思っています。








1b+2c+3a.b+4bタイプ

各地の色土と弁柄、藍を使っています。









1c+2a+3b+4a タイプ

自作の天然藍と合成藍を混ぜています。ベ−スの白土は出石。









1b+2a+3c+4aタイプ

白土に日本画用金粉(blonz)を混ぜています。金粉が石灰と反応するのか、硬化が早い。









1b+2a+3b+4aタイプ

このように芯になる部分にビ−ズや石そのほかの物を埋め込んで磨くことも出来ます。










1b+2c+3a,b+4a.bタイプ

地の部分は、弁柄で磨き、乾燥後色土をポチョ付けし乾く直前に延ばしてから磨く。










1b+2c+3a,b+4a.bタイプ

基本は上の物と同じですが、こちらは模様の付け方を意識的に行っています。










1c+2b+3a+4aタイプ

地の土は沖縄赤土、その上に沖縄クチャ土に中塗り藁スサの節抜きの物を入れて磨いています。大津磨きにワラを入れるというのは、おそらく初めての試みだと思います。









1aタイプ

光らせてはいませんが、仕上を出石白土に鉄粉を入れ時間が経つに従い錆が浮き出てくるものです。左官技法の「蛍壁」の応用です。










1c+2c+3a,b+4cタイプ

松煙の黒をポチョ付けでアトランダムに付けていきます。一日放置し完全硬化した後、その上から黄土、白土の順に付け磨き出します。表面には多少スが出来ますが、石のような感じに仕上がります。











1c+2a+3a+4cタイプ

出石白土で磨き、その上に石灰を混ぜたノロ土の各色を用いて描き、あまり光沢が出ないところで仕上げたもの。











1b+2b+3b+4aタイプ

中塗り段階で模様を付け、その上に松煙仕上土をかける事により凹部に松煙の黒が入り込む。良く乾燥させた後、その上から全体に弁柄仕上土をかけ、すぐに弁柄土をふき取り磨く。凹部に入り込んだ弁柄は松煙の上に重なり、その部分が赤くなる。









1c+2a+3a+4aタイプ

イタリア左官の仕上げの一つで、カルチェラサ−タというしゃれた名前の付いた仕上げ。ちなみに日本語では「ひげ剃り跡」。仕上げ白土に細かい砂を入れ、磨き出す。表面をさわると、まさにひげ剃り跡。土の色は何色でも良く、砂も色砂、ガラス粉などで表情は変わります。









1b+2a+3c+4bタイプ

仕上げに土を使わず、白土にアクリル絵の具を入れて仕上げとしたもの。

色々な人に仕上げに絵の具等も使えるのかという質問があり、後にも先にもこれ一つの試み。子供達は「綺麗!」と感動するが、やはり人工的なものを加えるのには抵抗がある。よく見るとヒビが入っているが、多分絵の具の中に入っている樹脂分と土の相性に問題が有りそう。解決法は検討していません。








1c+2a+3a,b+4aタイプ

多治見白土で磨き、その上に藍入りノロで型置きしさらに磨いたもの。












1a+2b+3a+4aタイプ

芯になる泥団子の表面を平らにしないでラフなままにしておき、その上に仕上土を塗り込む。さらにその上に同じ土を乗せ、わざと凹凸を見せて磨き出す。凹部は磨けないので、その差が面白みをだす。











1c+2b+3a+4bタイプ

3色の色土を順次塗り重ね磨き出すことにより、下地の微妙な高低差が色の違いとなって現れてくる。全く偶然のテクスチュア。












1c+2c+3a+4cタイプ

緑の仕上土を土手を築くように厚塗りし、完全硬化後間を埋めるように茶色土を塗り込み磨き出す。












1c+2c+3b+4cタイプ

最初に適当に松煙仕上土を塗り、完全硬化後弁柄仕上土を塗り、下に塗った黒が部分的に顔を出すように磨く。漆の根来塗りのような感じになる。












1a+2b+3a+4aタイプ

芯になる泥団子に粗めの砂を混ぜた土を塗り込み、完全に固めてから、仕上土を塗り込む。さらにその上から仕上土を塗り磨き出す。












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